胡蝶蘭の育て方
胡蝶蘭を専門に生産・直売しております。
胡蝶蘭の育て方や、選び方などの参考にご活用ください。
1.胡蝶蘭について
胡蝶蘭の原種のアマビリスは原産地のタイ、インドネシアなどでは日本の草花と同じように地元住民の身近な鉢花として生活に溶け込んでいるお花です。
原種のアマビリスは、もともとジャングルの山の中など大きな木の枝などに根を張らせて生きている着生ランです。
空気中の湿気を吸って生きていて、湿度の高いところを好む植物で、土の中は苦手です。
そのため海老名洋蘭園ではできるだけ環境に近づけるため出荷には特別注文で作ってもらった通気性の良い素焼きの鉢を使用しております。
植え込み材は水苔を使用しております。
花が終わった後はラッピングの紙を外してもらい、素焼き鉢(水苔)で管理ができるようになっております。
ラッピングの紙は咲いている期間でも早くとってあげると胡蝶蘭の株へのダメージが少なくなります。
通常、お花屋さんで販売されているコチョウランはセトモノの鉢(ギフト用で見栄えは良いが管理には適さない)が多いですが胡蝶蘭の管理にはまったく適しません。
健康な胡蝶蘭は空気中の湿気を吸おうとし、根が外に飛び出しますが、これは健康な証拠ですので切ったりはしないでください。暖かくなって植替えをする時もミズゴケと素焼き鉢を使ってください。
胡蝶蘭の咲いている期間は蕾の量により変わります。胡蝶蘭の蕾は3日に1輪づつ開花していき、満開から約1週間から長いと1~2ヶ月咲いていることもございます。温度管理や陽光管理によりその期間は大きく変わりますので、生育をお楽しみ下さい。
昔は住宅事情などで花はよくもったけど翌年が咲かない、冬ダメにしてしまった、などよく聞きました。
最近ではマンションや気密性の高い一軒家が増え、冬の夜間でも寒さに触れることがなくなったので、胡蝶蘭にとっては環境が整ってきています。
2番花、3番花を咲かせ何年も育てている方が増えています。健康を維持する秘訣は冬場の夜間でも部屋の温度が下がりにくいリビングなどに置いてあげてください。
リビングは常に人が居て暖房などが入っており、テーブルの上などに置いてあげると尚、良いでしょう。
地面より高いところに置くと、夜間の温度を3~5℃くらい高くすることができ、生育がよくなるでしょう。
胡蝶蘭を育てるために無理をして陽に当てる方がいますが、部屋の電気だけでもそれなりに育ちます。
特に花が咲いている期間は育てることよりも花を永く楽しむことに重点を置いてください。
花が終わったら株を休めながら、徐々に外の日光などに当ててあげると健康に育つと思います。
夜間の温度に気をつけ、通気性のよいところに置いてあげてください。
【胡蝶蘭の品種】
白大輪:お祝いの胡蝶蘭の中で一番使われる一般的な花が白大輪になります。
10年程前までは日本でもフラスコの苗から2~3年かけて高温室で苗を生育させていましたが、現在は台湾で苗を生産するリレー栽培方式が主流となっております。
白大輪のV3という品種が中心で花弁が12~13センチと大きく、肉厚で花並びの良さとが特徴です。
花の持ちが大変よく2~3ヶ月咲いていることも珍しくありません。
生産する側としても苗の葉がコンパクトに立葉に仕上がっているので、苗の輸送や温室内の置き場のスペースなどが配慮された優秀な苗となっています。当面はこの品種に代わる花は現れないと思われます。
購入する側から見ても同じ予算でしたら一番立派なボリュームのある胡蝶蘭は白大輪となります。
購入する時にV-3の胡蝶蘭くださいと言うと花屋さんがこの品種を用意してくれるはずです。
通じない場合は知識がないので違う胡蝶蘭専門店で買うのがお勧めです。
ピンク大輪:白大輪に次いで人気なのがピンクの胡蝶蘭になります。ピンクで現在、出回っている品種は多数あり、白大輪の次に定番となっています。
ピンク大輪は花弁の色が大きく分けて通常のピンク・濃いピンク・薄いピンクの3タイプに分かれています。
関西地方では濃いピンクが人気があり、関東では薄いピンクなどが好まれます。平均して一番使われるのは通常のピンクが一番多いです。
中央のリップも黄色と赤のタイプがあり、赤いタイプのほうが好まれているようです。
白赤大輪:ピンク大輪同様に人気があるのが白赤大輪となります。
現在、白赤はメインになる品種は不在で業界的にも品薄の状態が続いております。
白大輪に比べると背は低く花の大きさなども一回り小さくなります。
しかし、圧倒的な存在感があり、白大輪が多数並んでるいる中でも際立つこと間違いありません。
白の花弁に中央の赤リップは紅白をイメージさせ、おめでたい席でのお祝い花として年配の方を中心に高い支持を集めております。
白の胡蝶蘭以外を求めている方、個人の方でお誕生日のプレゼントなどにも人気があります。
お花が届いたら
お花が届いたら、箱から取り出し(鉢を持ちあげてください)、花を包んでいるフラワーストールを外してください。
フラワーストールはお花の輸送中に傷などが付いたりしない様に保護の為包んでいるものになります。
1.段ボールの後ろ側にある紐を外し、鉢を持って、箱から取り出す
※花や茎を引っ張らないでください
2.ビニール紐を外す
3.後ろのクリップを取り、ストールをゆっくり外す
お花の置き場所
胡蝶蘭は寒さに弱い植物なので、玄関などの温度変化のある場所は避け、家の中でもリビングなどの人が集まる所に置くことをお勧めいたします。
夜間も冷え込まない場所が最適です。
床の上には置かず、高い所に置いてあげると温度を高く保てます。
また、胡蝶蘭は風通しが良いところを好みますので、お部屋や事務所などに設置する際は必ず風通しの良い場所を選ぶようにしましょう。
エアコンの風が直接あたるとお花が痛んでしまうので、ご注意ください。
場所を決めたらあまり動かさず、同じ場所で管理してあげましょう。
無理して陽に当てる必要は無く、部屋の明かりだけでも十分育ちます。
陽当たりよりも温度を重視してください。
また、花は光の方向を向く習性がありますので、
光源が昼と夜で方向が変わると(太陽と室内灯)花の向きがバラバラになってしまいます。
光源の方向は一定になる様に気を付けましょう。
温度管理
胡蝶蘭は基本的に15℃以上で生育・成長するお花となります。
最適気温は18℃~25℃くらいとなります。
15℃を下回ると、休眠状態となり成長せず蕾が咲かない状態となってしまい、さらに10℃を下回る環境下にて生育すると、少しずつ傷んできてしまい、最悪凍害が出てお花が死んでしまいます。
また、気温が25℃より高いと花や葉がしおれて枯れてしまったり、そのままにすると株そのものが駄目になってしまうこともございます。
尚、胡蝶蘭は温度変化に弱いので、1日の温度変化が少ない場所で生育を行いましょう。
凍害とは
熱帯性の植物の生体膜は、低温では生体膜の流動性が低下するリン脂質で出来ていますので、低温下にて生育すると容易に細胞が壊れてしまいます。
(例としてバナナを冷蔵庫に入れておくと黒褐色に変化する現象)
胡蝶蘭の場合も気温が低いと細胞が壊れ、葉の色が濃淡のまだら模様になったり、花がしおれて枯れ落ちてしまいます。
湿度・光
湿度について
日本の気候であればほとんど調整する必要はありません。
ただし、10月~2月の冬場は暖房などにより室内が乾燥しやすいため、その場合は加湿器や霧吹きなどで加湿してあげてください。
理想の湿度は40%以上となります。
光について
胡蝶蘭は直射日光には当てず、日光に当てる場合はレースカーテン越しに当ててください。
ただ、無理して日光に当てる必要は無く、室内灯の明かりだけでも十分育ちます。
むしろ強い光に当たってしまうと、花や葉が日焼けをしてしまったりします。
また、花は光の方向を向く習性がありますので、
光源が昼と夜で方向が変わると花の向きがバラバラになってしまいます。
光源の方向は一定になる様に気を付けましょう。
水やり
1回約200ml~500ml程度(コップ1~2杯ほど)が目安となります。
※鉢のサイズと乾き具合を見て増減してください
溜まった水をそのままにすると、根腐れの原因となるので、しっかり水切りをしましょう。
水やりのタイミングは、鉢の中のミズゴケに指(割り箸など)を入れ、乾いているのを確認してからあげてください。
※湿っている際にたくさん水をあげると根腐れやカビなどの原因となります
水やりの頻度は気温(季節)により異なりますが、
暖かい季節は1週間~10日に1回くらい、
寒い季節は2週間~3週間に1回くらい、
の頻度であげてください。
水やりの時間帯について
1月~3月 暖かい日の午前中がおすすめ
4月~6月 朝方がおすすめ
7月~9月 涼しくなる夕方がおすすめ
10月~11月 朝方がおすすめ
12月 暖かい日の午前中がおすすめ
水をあげる際は花や葉ではなくミズゴケ(植え込み資材)に水をあげてください。花や葉にお水をあげても吸収することは無く、逆に水垢(白い跡の様になる)が残ってしまいます。
受け皿を使用する際は、たまった水は必ず捨ててください。
水温は室温に近い温度(常温)であげてください。冬場など蛇口の水をすぐにあげてしまうと、水温が低いため「凍害」を起こし、蕾が咲かずに落ちてしまったり株が傷んでしまうことがあります。
ラッピングについて
ラッピングされた状態で水を与えると、ラッピングに水が溜まって根腐れやカビを起こす原因となります。ラッピングは必ず外してから育てるようにしましょう。
また、ラッピングを強くこすったり水にぬらすと、色落ち(色移り)する可能性がございます。
ラッピングのまま飾る際は、移動するときに引きづったり、水に濡らさない様にお気を付けください。
肥料
胡蝶蘭にあげる肥料について
肥料はホームセンターなどで販売している蘭専用(希釈分量などはご購入いただいた肥料の説明書きをお読みください)をあげてください。
肥料をあげるタイミングは、生育期のみで大丈夫です。
生育期とは、6月~9月までの胡蝶蘭が育つ時期ののこととなります。
生育期は胡蝶蘭がいつもより栄養を欲しがりますので、普段のお水と光だけではなく、蘭専用の肥料をあげると元気に育ちます。
その他の季節は肥料をあげないで大丈夫です。成長期以外に肥料をあげると肥料焼け(過剰な肥料によって根が損傷すること)などのトラブルを引き起こす可能性が高いので肥料をあげるのを避けてください。
胡蝶蘭の育て方まとめ
- 室温は18℃~25℃の一定温度を保つ
- 常温の水を与える(ミズゴケが乾いたら)
- 湿度を保つ(乾燥していたら加湿)
- 光は室内灯で十分。
日光に当てる際はレースカーテン越しに当てる - 肥料は6月~9月の生育期のみ
胡蝶蘭は届いてからどのくらい持ちますか?
胡蝶蘭は蕾1つにつき5~7日間開花にお時間がかかります。
また、満開から約1~2週間ほど満開期間がございますので、以下期間がお楽しみいただける期間となります。
蕾の数×5~7日+満開期間7日~14日=お花の期間
胡蝶蘭を2度咲きさせる方法
胡蝶蘭の苗の寿命は生育方法や根腐れや病気が無ければ、約10年~50年程といわれています。
花が終わっても葉が元気なら、また咲かせることが出来ます。
※但し、品種によっては開花が難しい胡蝶蘭もありますので、100%咲く保証は出来ません。
※花芽の成長は、胡蝶蘭が現在の環境に慣れてからとなります。場合によっては、2~3年ほどかかることもあります。
1.根本から5~6節目の所を園芸用ハサミ(消毒済み)で切る
2.切った部分付近より再び花芽が出始めます。水や肥料はいつも通りに与えてください
3.徐々につぼみが開花してきます
病気かもと思ったら
症状ケース1.花枯れ
開花している花が枯れてしまう状態
開花した状態のお花が枯れてしまった場合、温度や湿度などの環境変化によるストレスや適した環境下ではない場合によく診られる症状です。
温室と大きく異なる環境下(高温、低温、多湿、乾燥など)に置かれると通常は環境変化に順応するのですが、個体差などにより稀に環境変化についていけず枯れてしまうお花がございます。
お花が届いたら、まずは胡蝶蘭の育て方をご参照いただき、最適な環境づくりを行ってください。
元気がない状態であれば、適した環境下で養生していただければ回復致しますが、1度枯れてしまうと元に戻すことはできません。
枯れていないお花に影響が出ない様に、枯れてしまったお花は摘んでしまい、他の花に栄養がいくようにしてあげると良いでしょう。
症状ケース2.蕾枯れ
蕾の状態で開花せず枯れてしまう状態
蕾のまま成長しないケースの場合、多くが休眠状態になっている可能性が高いです。
休眠状態とは、お花の本体である「株」が生命維持を優先して開花よりも生きることを優先している状態です。
適した環境下ではない状態だと、休眠状態となり蕾のまま成長が止まってしまいます。
また、蕾が黄色くなり枯れた場合は、ダニや水不足などが原因の可能性がございます。
ダニにより食われてしまったり、温度変化や水分が足りていないと、末端の蕾まで栄養が行かずに、黄色く変色して枯れてしまうことがございます。
最適な環境づくりを行っていただき、枯れてしまった蕾は摘んでしまい、お水をたっぷりあげて、殺虫剤(キンチョールなど)を軽く吹きかけて養生してください。
症状ケース3.根腐れ
根が黒くなり腐ってしまっている状態
水のやり過ぎやラッピングをしたままお水をあげてしまったり、受け皿のお水を捨てずにそのままにしたり、水切れが不十分で常時水に浸かってしまっていると起こる症状です。
根が腐ってしまうと、胡蝶蘭の本体である株が死んでしまうので、水をあげる際はミズゴケが乾いてからあげる様にし、水をあげた後はしっかり水切りをしてください。
症状ケース4.葉に白い跡
葉に白い跡が残っている
葉についた水が乾燥して残る跡(水垢)になります。
水道水に含まれるカルシウム等のミネラル分が原因で葉に白い跡(水垢) が付いてしまいます。
葉に水が付いてしまったら、なるべく拭いてあげて跡が残らない様に綺麗にしてあげてください。
症状ケース5.葉っぱ(下葉)の黄化
下側の葉が黄色く変色して落葉してしまう状態
原因として、細菌(リゾクトニア菌など)によるものか老化が原因となります。
細菌の場合、数枚同時に黄色くなり落ちてしまいます。
湿気が多い時や、水をあげすぎていると細菌に感染しやすいので、少し乾燥気味にしてあげると細菌感染を防ぐことができます。
老化の場合は数か月に1枚くらいのペースで落葉していきます。
また、室内が高温の場合にもストレスで葉が黄色く変色してしまう場合もございます。
1度黄色くなってしまった葉は元に戻せないので、軽く引っ張って取れる様なら取ってください。
引っ張っても取れない場合はそのまましばらく置いておき、取れる様になったら取ってください。
症状ケース6.軟腐病(ナンプビョウ)
葉の内側が液化して腐敗し、悪臭を放つ状態。
軟腐は細菌による病気です。
患部はやわらかくブヨブヨで手で触れると組織が破れて中の水がでてきます。
この中にたくさんの軟腐細菌が入っています。
細菌は表皮を分解し健全な葉の表面に広がり、たくさん付着していきます。
灌水で水の中を泳いで広がり、乾燥すると埃のように風に乗って飛び散り広範囲に感染することがございます。
対策として、特に大事な株は患部を多目に切り取り、切り口を台所用塩素入り洗浄剤(キッチンハイター等)の原液を塗ります。
そうでない株は新聞紙を被せ、燃えるごみの袋に入れて処分してください。
ただ、葉元に軟腐病が出来てしまった場合は、回復させることはできませんので株ごと処分する必要があります。
症状ケース7.葉焼け
葉が茶や黄色、乾いて白や黒に変色した状態
葉に直射日光が当たったり、室内灯の光源が強かったり近いことにより日焼けし、傷んでしまった症状となります。
胡蝶蘭は直射日光には弱いので、日光に当てる場合は必ずレースカーテン越しなどで生育下さい。
変色したところは、直火消毒したはさみで切り取って症状拡大を防いでください。
変色が葉の全体、広範囲に及んでいる場合は、葉が枯れ落ちるのをお待ちください。
症状ケース8.葉が紫色になった
胡蝶蘭の葉が紫色になった場合、胡蝶蘭の置いている環境の温度が下がっていて低温障害を発症している場合が考えられます。
または、強い光を感じてたくさんのアントシアニンを分泌して葉っぱを守ろうとしている状態です。
この症状の場合は、胡蝶蘭を置いている環境(温度、光量)を見直してあげましょう。
当園の胡蝶蘭が咲くまでの様子
当園の胡蝶蘭が咲くまでの様子をご案内いたします。
自社温室での生産販売だからこそ、しっかりした胡蝶蘭をご提供させていただきます。
1.胡蝶蘭の苗を鉢に植え込む様子、ふさふさしているのはミズゴケです
2.約1年経った苗です。素焼き鉢で葉が元気です。
3.約1年半を過ぎ花芽がでてきました
4.徐々につぼみの形になり開花まであと少しです。
5.つぼみも大きくなり花が開き始めた様子です。
6.きれいな胡蝶蘭が咲きました。